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アーティストブックやZINEの制作者、出版社、ギャラリー、書店などが一堂に集まり、訪れる人たちと対話しながら出版物を販売するアートブックフェア。版権販売など出版に携わる業者間の取引が中心で商業的な側面が強い見本市やブックフェアとは異なり、アートブックフェアはアーティストや周辺のコミュニティの活動を支援することを目的とした公共性の高さが特徴で、各国のフェアに出展し、ローカルのコミュニティと交流しながら活動の幅を広げていくアーティストや出版レーベルも多い。本を介した文化や知識の交換とともに、既存の経済システムに頼らない出版流通の可能性を探る機会ともなっている。

しかし、ここ数年は世界的なパンデミックの影響により多くのフェアが開催中止やオンラインへの移行を決断したり、ロジスティクスの問題も発生するなど、さまざまな課題を抱えることになった。コロナ禍での新たな試みとして注目されるオンライン開催に関しても、ウェブのプラットフォーム構築やオンライン販売などに対応できたのは、比較的大きな規模のアートブックフェアに限られており、対面でのコミュニケーションへの揺り戻しや、大規模になりすぎたフェアに対しての疑問も少なからず生まれている。

そこで、本特集では、近年新たに始まったアートブックフェアや、欧米のアートブックフェアを参照しつつ独自のコミュニティづくりを目指すアジア各国のアートブッ クフェアに注目してみることにした。中国、カナダ、台湾、UAE、シンガポール、タイ、ノルウェーの7つのフェアの運営団体にオンライン取材を行い、コロナ禍での開催状況や、フェア出展者の出版物から推薦タイトルを紹介してもらった。また、各国のフェアに参加経験をもつ出版関係者たちによる寄稿・インタビューを通じて、アートブックフェアの今日的な役割や、アートブックの流通や保存についての考察も試みている。

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