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特集:小林一毅 生活の図考
企画・構成:小林一毅、明津設計、アイデア編集部 デザイン:明津設計
グラフィックデザイナー、小林一毅(こばやし・いっき)の特集号。小林は2015 年に多摩美術大学を卒業後、資生堂に入社しクリエイティブ本部でデザイン業務を担当。退職後の2019年にはJAGDA新人賞を受賞した。現在はフリーランスのグラフィックデザイナーとして、東京を拠点に活動を続けている。
本特集では、小林が2023年冬から描きためてきた新作図案38点を収録した。小林の制作において、これらの図案は下絵にあたるものであり、通常は手描きの図案をもとにIllustratorでパスを起こし、デジタルでの作業を介してデザインとして完成させていく。しかし、小誌では小林がつくる「かたち」が立ち上がってくる過程や、図案を描くという行為を通じて彼がどのように身体で思考しているかに焦点をあてるため、「生活の図考」と題し、デザイン未然のものとしての「図案」を並べてみることにした。誌面の構成・デザインは、小林と大学の同期にあたり、その活動を身近に見てきた明津設計によるものだ。
高度にデジタル化された現代社会においては、ものづくりの現場でも合理化が進み、おどろくべきスピードで大量の表現が発生しては消費されていく。ここ数年の生成AIブームはそうした状況を後押し、一定のアルゴリズムに基づいてイメージを操作したり、他者との協働やツールの手助けを借りたりすることで、画が描けなくてもデザインをすることは可能だ。
造形へのアプローチがアナログかデジタルかといった議論は、デザインにおいてはもはやそれほど大きな問題ではなく、アナログとデジタルの両者が適材適所で使い分けされていけばいいだろう。ただ、誰かのために何かをつくろうとする動機や、何をもって完成とするのか、少なくとも現時点では、始まりと終わりには人間の判断が必要となる。そうした判断の材料として、わたしたちが手や目を通じて得た経験は、ビッグデータのアルゴリズム以上の確かさをもっている。
日々の生活のなかでの整理のつかない感情や、余分なもの、なんでもないものにふと関心を抱くような感性が、かたちの根拠となり、強度ともなる。つくること、働くこと、暮らすこと、日々わりきれない生活のなかでも実直にかたちと向き合い、手を動かす小林の姿勢から、かたちが生まれるということの尊さについて、いまいちど考えてみることにしたい。
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